尾上神社の銅鐘

この銅鐘は、多くの人々に海の神様として信仰され ている住吉大明神を祭神とする尾上神社にある梵鐘 です。 『千載和歌集』 や謡曲 「高砂」 などにおいて謡 われているほか、江戸時代の地誌である『播磨鑑』 や 『播州名所巡覧圖絵』 などにも記されており、 古来 「尾上 の松」 とともに多くの人々に礼賛されてきました。

仏像や天人像など

中国鐘 朝鮮鐘和鐘 (日本鐘) に大別される梵鐘のう ち、 尾上神社の銅鐘は朝鮮鐘に相当します。 兵庫県内の朝 鮮鐘は、 本鐘のほかに鶴林寺の1があるのみです。

特徴や歴史的背景

この銅鐘の特徴として、 単頭の竜頭で、その後ろに円筒 形の甬 (旗)を立てていること、上帯・下帯を唐草文な どの各種文様で飾っていること、上帯の下に唐草文の装飾 仏像や天人像など 帯による乳郭を設けていること、 鐘身に仏像や天人像、 楽器などの装飾を鋳出していること、 撞座を二方に配する ことなどが挙げられ、 全体的に荘厳美麗な鐘といえます。

制作年代については、この銅鐘の装飾の大部分が、 高麗 の顕宗2 (1011)年に鋳造されたと推定されている島根県天倫寺の銅鐘の装飾とたいへんよく似ていることから、 天 倫寺の銅鐘とほぼ同じ11世紀前半と考えられています。

上帯、 乳郭
乳郭には3段3列の乳の存在が窺えますが、 現在は乳座 を残すのみで乳はすべて失われています。
沈鐘伝説

『播磨鑑』 の記載や地元の伝承によると、この鐘は、 応仁2 (1468) 年に海賊によって盗まれ、 高知県の足摺岬 付近で海中に投げ棄てられたそうです。 その後、地元の漁 師たちによって引き上げられ、 高野山へ奉納されたものの、 鐘を撞くと「オノエへ、 イノー (帰ろう)」 と聞こえるので、 尾上神社に戻されたといわれています。

響きの灘

尾上の鐘の響く範囲を響きの灘とする伝承があります。
尾上神社の美しい鐘の音色(盤渉調)は、その昔、多くの人々に親しまれていたのでしょう。

尾上神社の銅鐘は、 鶴林寺の銅鐘とともに希少な朝鮮鐘であり、文化財としての価値が高いだけでなく、古くから 多くの人々に親しまれてきたもので、地域の歴史を語るうえでたいへん重要な文化財といえるでしょう。
(文・写真/平尾)

下带

尾上神社の銅鐘

別称:尾上の鐘、朝鮮鐘、高麗鐘
数量:1口
寸法:高126.7cm,口径73.5cm
材質・技法:青銅鑄造
時代:平安時代後期11 世紀 (朝鮮高麗時代) 
指定:重要文化財
指定分類:工芸品
指定名称:銅鐘
指定年月日:明治 34(1901)年8月2日

タイトルとURLをコピーしました